輝月が喋ったとき、内心何を考えているのか答えてくれる機械をファンが作った。
ちょっとだけ予想外な機械の反応に少しだけ輝月のことを可愛く思うキュピル。
輝月
「ふっ、私と談話する事は普通の人では願っても出来ぬ事だぞ。少し有難く思ったらどうじゃ？」
返事をする前にキツキンガルを覗くキュピル。
『キュピルと談話する機会は滅多にないからな・・・。この機械に巡り合えた事を有難く思わぬとな。』
キュピル
「ぶはっ。」
輝月
「ぬ？どうしたのだ？」
キュピル
「いや・・・・なんでもない・・・・。」
口が裂けても思わぬギャップに可愛く思い始めたとは言えない。
琶月
「師匠ー、ちょっとウキウキしてますね。私にはわかりますよ！！」
輝月
「な、何じゃ藪から棒に。引っ込んでおれ！！」
琶月
「ああああああああああああああ！！ひどいひどい！」
こっそりキツキンガルを覗くと、そこには『琶月がおると雰囲気が台無しになる。・・・む？雰囲気ってなんじゃ？』っと書かれていた。
とりあえず「琶月、悪いけどキューとジェスターの面倒を見てくれないか？」っと言おうとしたその時。
ルイ
「『キューとジェスターの面倒でも見させて輝月と良い雰囲気になってしまおう。』・・・そう考えていますね？キュピルさん。」
キュピル
「うわっ！！！！！」
背後から何の気配もなしにルイがわざと脅し声で話しかけてきたために、その場で飛び上がるキュピル。
ルイ
「悪いこと、考えていませんよね？」
キュピル
「ちょ、ちょっとふざけてただけさ・・・。」
輝月
「むっ、ルイ！一体何の用じゃ？」
『キュピルにまとわりつく虫がでおったか。』
キュピル
「（まとわりつく虫って・・・・。）」
ルイが二度三度手を振り虫を追い払う仕草をした後、
ルイ
「キュピルさん、ちょ～～～～～っと、私も一対一でお話したいことがあるので来て頂けますか？」
っと、満面の笑顔で語りかけてきた。
断ったら後が怖いので輝月に一度だけ謝りその場を後にする。
輝月
「ま、待たぬか！私もキュピルと話をしたい事が・・・。」
が、ルイは輝月の問いかけを無視し、二人はキュピルの家に戻っていった。
琶月
「あーあ、行っちゃいましたね。師匠～押しが弱いんです、押しが！！でもキュピルさんの一体どこがいいんでしょうかねぇ。
意地悪で給料も減額するし・・・。悪党悪党！」
輝月
「はぁ・・・。」
琶月
「うぇっ！！？師匠にたたかれると思ったら溜息！！？逆に超痛い精神ダメージ！！」
輝月
「弱者にはワシの考えている事は分らぬじゃろうて・・・。」
琶月
「あ、あのぉ～・・・師匠・・・・。ま、真面目に相談に乗るのでそんな傷つきそうな事いうのや、止めてください・・・。」
キュー
「おーおー！琶月を苛めるには悪口言えばいいんだなー！馬鹿ー馬鹿ー！」
琶月
「全然効きませ～～～ん！！」
輝月
「（うざい・・・・。）」
・・・・・。
・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・。
ルイ
「キュピルさん、今日ちょっと私とお出かけしませんか？」
キュピル
「え？お出かけ？」
てっきり何か問い詰められる物ばかりだと思っていただけに、出かけの誘いを受けるとは予想外だった。
ルイ
「はい。最近一緒にどこかに行っている事も少なくなってきたじゃないですか。なので、たまにはお出かけしたいなー・・・っと・・・・。」
キュピル
「（ふむ・・・。ルイもルイなりにかなり気にしていたんだな・・・。ルイの言う通り最近二人でどこかに行くような事もしていなかったし・・・。
・・・それなのに輝月と二人きりになって話している所を見たら、誰だって嫌われたのかと心配になるだろう。
俺も馬鹿な事したなぁ・・・・。」
ルイ
「・・・良いですか？」
キュピル
「断る理由なんてないよ。ルイの言う通り最近二人でどこかに行くような事していなかった。たまには泊りがけで何処かに行ってみるか？」
ルイ
「泊りがけ！良いんですか！？」
ルイが体を前のめりに倒し、わくわくした表情でキュピルに詰め寄った。
キュピルも少し体を前に倒しヒソヒソと声を細くして
キュピル
「そのぐらい奮発しても大丈夫だろう。仕事はファンには悪いが任してもらうよ。」
と、ルイに伝える。
ルイが両手でガッツポーズを取り喜ぶ仕草を見せる。
ルイ
「久々にキュピルさんと二人で出かけられて嬉しいです！」
再び満面の笑顔。それでもさっきの笑顔とは全く意味の違うもの。
・・・さっきの満面の笑顔は、それはそれは恐ろしいものだった・・・・。
キュピル
「（どっちに主導権あるのかわからなくなるな。）」
すると、ルイはすっと席から立ち上がり旅の支度をしに部屋に戻っていった。
さて、どこへ旅行しに行くか。そう考えていると、誰かが窓から覗いていることに気が付いた。
キュピル
「（ん？）」
一人はすぐ隠れたためわからないが、もう一人はトロかったのですぐにわかった。琶月だ。
そこから分ることは覗いていた人物は十中八九、輝月と琶月。
キュピル
「そんな所で覗いていないで入ってきていいよ。」
そう言うと琶月は扉から入り輝月は窓ガラスを破って中に入ってきた。
ガシャン！と窓ガラスの割れる音が部屋中に響き渡る。
キュピル
「うわっ！何を考えているんだ！」
輝月
「中に入ってきて良いと言ったから入ってやったまでじゃが？」
ポケットに入れていたキツキンガルが震えた。手に持ちモニターに何が書かれているか確認する。
『憎い！！ルイは良くて私がダメな理由は何だ！！』
キュピル
「（めっちゃ怒ってる・・・・。いや、ってか輝月・・・・。薄々気づいていたけど・・・・。・・・・一体どこで輝月に好かれたのか。ルイは・・・嫌な推測だけど作者が関係している可能性があるから分るとして・・・・。輝月はわからない・・・。）」
普通なら手放しで喜ぶべきなのだろうけど、状況が状況なだけに・・・・。なんせ修羅場だ。
琶月
「よっ、色男。」
一秒後、窓から琶月が放り投げられ頭からすぐ目の前にある砂浜に突き刺さった。
琶月
「ンンンーーー！！」
キュピル
「（やれやれ・・・・。）」
ルイ
「キュピルさん！？今の窓ガラスの音はどうしたんですか！？」
輝月
「窓ガラスが勝手に割れた。」
『我ながら苦しい言い訳じゃな。』
全く持ってその通りである。
ルイ
「そんな言い訳通用すると思っているのですか！？そうやってキュピルさんの足を引っ張ることをするから面倒に思われていることを自覚するべきです！」
キュピル
「待てルイ、そんな風には・・・・。」
輝月
「黙れ！貴様こそ、キュピルに無理強いをし負担をかけている事に気づいたらどうじゃ！！」
『こんな奴に負ける訳には行かぬ！』
キュピル
「わーーー！！わーーーー！！ちょっと二人ともタイム！！」
ジェスター
「あーーーーーーーー！！キュピルが私の特許を侵害した！！！そのセリフは私が起源で私だけが言っていいセリフなの！！わああああああああーーーーーーーーーーーー！！！」
キュピル
「ワッーーー！！こんな時に妨害するなーーー！！！！！」
突如現れたジェスターにタックルを食らわせ地面の上で取っ組み合いを始める二人。何気にジェスターは取っ組み合いが強い（勿論向こうは本気を出していてこっちは逆に本気を出せないからなのだが
ジェスターの相手に手間取っているうちに二人の雰囲気がただならぬ状況になりつつあった。
輝月
「ルイよ、私達も一度一対一で話し合った方が良いと思わぬか？」
手に握っていたキツキンガルが震えた。
ジェスター
「ん～～～？キュピル何持ってるの？」
キュピル
「これでジェスターを退治する。」
ジェスター
「あ、急用思い出した。」
ジェスターがくるりと向き直るとそのまま自分の部屋に戻っていった。
キュピル
「（やれやれ・・・・。）」
ルイ
「そうですね。一度話し合ったほうがよさそうです。」
二人の声のトーンが低い。今にも殺し合いが始まりそうな怖い雰囲気だ。
キュピル
「（そうだ、キツキンガル。）」
『隙を見つけて殺してしまおう。』
キュピル
「だああああああーーーーーーーーーー！！！！何を考えているんだ二人とも！！！」
二人の間に割って入り距離を開かせる。
キュピル
「あまり変なこと考えているようなら私情を抜いて無慈悲な罰を与えるぞ。とにかく一旦落ち着いて今二人の考えていたことの愚かさに気づけ。」
ルイも輝月もムスッとした表情をしている。
キュピル
「とりあえずルイは旅行の支度をしてくれ。」
ルイ
「・・・わかりました。」
ルイが振り返り自分の部屋に戻ろうとしたその時。
輝月
「ワシも行く。」
目にもとまらぬ速さでルイがもう一度振り返った。俺がなんと言うか出方を伺っている・・・・。
返答する前にキツキンガルをこっそり覗く。
『・・・・・・・・・・・・。』
キュピル
「（ん、無心？）」
ルイ
「何見ているんですか？」
キュピル
「あ、悪い。これは何でもない。・・・輝月は・・・その・・・。」
なんて返答するか・・・・。
ルイもじーっとこっちを見ているし・・・・。絶 体 絶 命。
その様子を窓から堂々と覗いている琶月。表情はニヤニヤと笑っている。後で減給を言い渡す。
ルイに背を見せ、輝月の正面に立つ。
そして、指を動かして合図を送りつつ話しかけた。
キュピル
「悪い、今回はあきらめてくれ。」
が、輝月に送った合図は
『後で部屋に行く。』
輝月が数秒間を置くと輝月にしてはやけに嬉しそうな表情をしながら
輝月
「ふっ、それならば諦めよう。」
そう言い残すと輝月はキュピルの家から直接通じているクエストショップへ戻っていった。
手に持っていたキツキンガルに目を落とすとそこにはこう書かれていた。
『よかった・・・・。安心した・・・・。』
キュピル
「（やばい・・・。輝月ちょっと可愛いな・・・。）」
昔は無感情と思っていたが、よくよく観察してみると意外に喜怒哀楽がクッキリ出ている事に最近気が付いた。
さっきの嬉しそうな表情も俺は気づいてもルイは気づかなかっただろう。
後ろからルイが話しかけてきた。
ルイ
「よかった。これでもしキュピルさんが輝月さんも連れてきていたら呪い殺してしまう所でした。」
それは輝月と俺、どっちに言っているのだろうか。
キュピル
「ささ、旅行の準備しよう。」
ルイ
「ええ。」
・・・後で輝月の部屋に行かないと。
そう思っていると後ろからもう一度ルイが小さな声でヒソヒソと耳元で話しかけてきた。
ルイ
「浮気したら怖い事になりますから。」
思わず背筋が凍りついた。
ルイ
「満たされていないなら、満たされるよう私が満たしてあげますから。」
もっと背筋が凍りついた。
ルイからは普通の愛が感じられない。まるで・・・誰かがそうさせているかのような・・・・・。
・・・・・。
・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
一方その頃。輝月はと言うとキュピルがやってくる事を今か今かと待ちわびているのか部屋の中でうろうろしていた。
琶月
「いいですね、師匠。昔はあんなに武力一筋、修行あるのみって意気込んでいたのに気が付いたら普通の女性になっていますね。」
輝月
「むっ、勘違いするな琶月。紅の道場も跡継ぎを考えねばならぬからな。お主に紅の道場は任せられぬ！」
琶月
「あ、私がさっき言ったことは否定はしないんですね・・・・。あ、師匠。十中八九振られると思いますけどその時が私が！！」
一秒後、ナルビク全体に響き渡るほどの琶月の大きな声が響き渡った。
＼あんぎゃぁっーーー！！／
ファン
「今日も元気ですね。」
・・・・。
・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
それから数時間後。
旅行先は定番のブルーコーラルで決定した。
何度か向こうの遊園地には皆（まだクエストショップがなかった頃だが）と遊びに行ったことはあるが
つい最近また新しいテーマパークができているらしい。
出発は明日の早朝。
ルイは明日のためにと言って既に寝てしまった。
輝月に会うなら今しかないだろう。
夜中。こっそり自分の部屋の窓から外に抜け出し、輝月がいる部屋の窓まで移動する。
その後、コンコンと小さくノックすると輝月が窓を開けた。
輝月
「おぉ、キュピルか。待ちくたびれたぞ。」
キュピル
「ちょっと入らさせてもらうぞ。」
輝月
「うむ。」
部屋はやけに片付いていた。
キュピル
「整理整頓心がけているみたいだな。輝月らしい。」
琶月
「整理整頓してるのいつも私何ですよー。」
一つ隣の部屋で寝ている琶月が寝言を言った。
キュピル
「・・・それで、昼間の件なんだけど・・・・。」
輝月
「キュピルよ、私も連れてってくれると信じておるぞ？」
ポケットに入れていたキツキンガルが振動した。
『キュピルと二人で出かけたい。』
キュピル
「まぁまぁ・・・。輝月も一緒に行って何がしたいんだ？向こうは修行だとかそういうのは一切ないぞ。」
輝月
「そんな事は知っておる。」
キュピル
「それなら何で・・・。」
輝月
「キュピルよ。お主に良い話を用意してやったぞ。」
キュピル
「良い話？」
話を聞く前に・・・。さっきからキツキンガルが物凄く震えているので一度目を落とす。
『琶月に言われた通り・・・。押しじゃ、ここで押しまくってキュピルを引き込む・・・。』
キュピル
「（・・・ん？何をたくらんでいるんだ？）」
輝月
「うむ。喜ぶが良い、お主を私の元に置いてやろう。」
キュピル
「ハハハ、もうある意味置かれているような物じゃないか。」
わがままに付き合わされているという意味で。
『う、うぅぅ・・・。言葉を濁してしまった・・・。』
キュピル
「（ん？言いたい事はそれではなかったと言うのか？）」
輝月
「ち、違う・・・。そういう軽い事ではなく・・・・その・・・・。」
輝月が珍しく視線を逸らし、照れ隠しする。
嫌な予感がして思わず目を見開く。
キュピル
「あ、まて。輝月。それ以上は言うｎ・・・。」
輝月
「キュピル！お主を私の婿として迎えたい！！」
・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
『断るでない・・・！！断るな・・・・！！！絶対に断るでない！！！！
キュピル・・・・お主が居たから精神的に不安定に陥っていたあの状況から脱し・・・更に武力も技も磨く事が出来たのだ・・・・。
絶対的な力を持っていた先代羅月・・・もとい私の父。その父を殺した私の素性を知ってなお傍についてくれた・・・・。
周りは羅月から受けづいた力と技を身に着けるために恐れ戦きつつも力のためだけに近づく愚かな者ばかりだった・・・。
それでもお主は・・・・。キュピルだけが・・・・・。キュピルだけが本当の私を・・・・。
断る・・・・な・・・・・。』
もはやキツキンガルを隠すことすら出来なくなっていた。
気が付けば輝月からは照れ隠しが消え、いつのまにか涙目になっていた。
長い長い沈黙の後・・・・俺は・・・・・・・。
続く
追伸
もし、ルイが居なければ間違いなくキュピルは輝月と添い遂げていただろうし輝月が居なければ確実にルイと添い遂げていただろう。
だが、もしも二人ともいなかった場合は・・・・・？
次回ちょっと小説初となる『選択肢』を検討しています。(と、いってもリンクでつないでいるだけの物なのでアレなのですが。